那須野
むしのこゑさへ分ちなく、
野邊の狐火おもひにもゆる、燃ゆる
過ぎし雲井にありし時、君が
もろこしにては
桐の一葉に秋たちて、きのふに
淚の、
出典: 山田流箏歌「那須野」〜『八葉集』
玉藻前が登場する『殺生石』という演目が能にあります。そこで描かれた玉藻前󠄁のイメージとここでの玉藻前󠄁のイメージはかなり違っているように想えます。能では人心を惑わし封建秩序を乱す物怪 として容赦なく退治されてしまいます。しかもその後も有害極まりない殺生石と化して、後々の世まで人々に疎まれる設定となっています。その噺に比べると、こちらの叙情と幻想を伴った「那須野」には、玉藻前に対する憐憫の情さえ感じられます。このことから私は更に想いを巡らせ、「那須野」を能の『殺生石』とそれを成立たせた封建社会へのアンチテーゼとして捉えなおし、エンディングのイメージを独自に変えました。それは現代における霊的救済(魂の癒やし)を想ってのことでした。 (作曲者)
作曲&オーディオファイル制作 髙橋 喜治
Composition and Audio file created by TAKAHASHI, YOSHIHARU
Composition and Audio file created by TAKAHASHI, YOSHIHARU